茨城の田園に突如現れる「乗り物と美の巨大帝国」──2026年、ザ ヒロサワ シティが日本の観光常識を覆す理由
ザ ヒロサワ シティが今、国内外のカルチャー愛好家や旅慣れた大人たちの視線を釘付けにしている。茨城県筑西市。見渡す限りの平野と田園風景が広がるこの地に、突如として現れる100万平方メートルもの異空間。それは行政主導のハコモノでも、巨大資本による記号的なテーマパークでもない。本物の航空機、往年の名列車、クラシックカー、そして世界的建築家が手がけた美術館が奇跡的な調和を保ちながら共存する、前代未聞の複合カルチャーエリアだ。
東京から車を走らせること約90分、筑波山を遠望する静かな景色の中に、戦後日本の航空史を塗り替えた名機や寝台特急の姿が次々と飛び込んでくる。単なる地方のレジャー施設だろうと高をくくって訪れた者は、ここザ ヒロサワ シティが放つ異様なまでの熱量と、一握りの情熱家たちが築き上げた濃密なリアリズムに言葉を失うことになる。2026年、なぜこの場所がこれほどまでに人々を惹きつけるのか。その核心に迫る。
国立科学博物館の至宝「YS-11」が呼吸を取り戻した場所
広大な敷地の一角、ひときわ目を引く大屋根の下に鎮座するのは、国立科学博物館から移管された戦後初の国産旅客機「YS-11」量産初号機だ。羽田空港の格納庫で長年眠り続けていたあの伝説の機体が、解体と陸送、そして気の遠くなるような再組み立てを経て、この地で再び一般公開されている。
機体に近づくと、アルミ合金のリベット一本一本に刻まれた時代の息づかいが伝わってくる。単なる展示ではない。科博廣澤航空博物館のエリアには、零戦(零式艦上戦闘機)や名機「赤とんぼ」、さらにはヘリコプターの実機までが惜しげもなく並ぶ。ガラス越しに眺めるだけの冷たい標本ではなく、機械が本来持っていた「熱」や「匂い」を生々しく残す展示手法は、乗り物ファンならずとも胸を衝かれるものがある。
昭和の鉄路が甦る──「北斗星」と名車たちが放つ無言のリアリズム
航空エリアを抜けると、今度は青い車体が視界を染める。かつて上野と札幌を結び、旅情の象徴だった寝台特急「北斗星」だ。牽引機関車EF81形電気機関車とともに、客車が当時の姿のままレールの上に佇んでいる。
車内に足を踏み入れた瞬間、独特のシートの質感と金属の冷たさが混ざり合った香りが鼻腔をくすぐる。かつて無数の旅人が夜を明かした空間が、そのまま保存されているのだ。傍らには蒸気機関車D51、往年の新幹線0系、さらには関東鉄道の気動車や往年の路面電車までが勢揃いする。鉄道博物館のようなスマートな整理とは一線を画す、圧倒的な物量と実物へのリスペクト。これらが青空の下に整然と並ぶ光景は、どこか白昼夢のような迫力に満ちている。
隈研吾建築と巨石が織りなす静謐、廣澤美術館という異空間
乗り物のダイナミズムから一転、敷地を奥へと進むと空気が一変する。世界的建築家・隈研吾氏が設計を手がけた「廣澤美術館」だ。約1,500個、総重量6,000トンを超える自然の巨石を巧みに配した回遊式庭園の奥に、風景に溶け込むような木と石の建築が静かに佇んでいる。
館内に足を踏み入れれば、横山大観をはじめとする近代日本画の傑作や、板谷波山、人間国宝たちの陶芸作品が迎えてくれる。無機質なエンジンの美を堪能した直後に、極上の静けさと日本美術の幽玄に浸る──この極端とも言える振れ幅こそが、他のいかなるリゾートにも真似できない独特のリズムを生み出している。
下町ならぬ「地場企業」の執念が結実した究極のワンダーランド
なぜ、茨城のこの地にこれほどのコレクションが集まったのか。その背景にあるのは、地元発祥の廣澤グループを率いる廣澤清氏の凄まじいまでの蒐集熱と郷土への愛着だ。「人々に本物を見せたい、次世代に技術と美を遺したい」という愚直な情熱が、行政の複雑な手続きや莫大な維持コストの壁を突破させ、前例のない民間主導型ミュージアムパークを成立させた。
ビジネスの合理性だけを追えば、これほどの手間と費用がかかる実物保存は到底成り立たない。採算性を超えた個人のヴィジョンが、時空を超えた文化的オアシスを創り上げたのだ。
泊まり、味わい、大地を駆ける──滞在型複合リゾートとしての新機軸
カルチャーや歴史の追体験にとどまらないのが、近年の進化の凄まじいところだ。敷地内には広大なゴルフ場やオフロードコース、さらにはバーベキュー施設やグランピングエリア、バナナの温室農園までが有機的につながっている。
昼は名機や名車を愛で、アートに触れ、夕暮れには緑豊かな自然の中で地元食材を味わう。かつての観光地が陥りがちだった「見て終わり」の通過型レジャーではなく、五感すべてを使って一日を過ごす「体験の集積地」へと見事に脱皮を遂げている。
地方創生の青写真か、それとも痛快な道楽か:2026年の現在地
均質化された商業施設が全国に溢れる現代において、ここが放つ強烈な個性は異彩を放っている。決して万人受けを狙って薄められたエンターテインメントではない。技術への偏愛、美へのこだわり、そして広大な敷地を活かした贅沢な空間使い。そのすべてが、訪れる者に心地よい驚きと揺さぶりを与える。
本物を目の当たりにしたとき、人は理屈抜きで心を動かされる。東京近郊にありながら、日常の延長線上では決して出会えない規格外のスケール感。まだ見ぬ熱気とロマンを求めて、今週末、茨城の広大な空の下へと車を走らせてみる価値は十分にある。 (出典: ザ ヒロサワ シティ(Yahoo!ニュース))